時代に合わせた新たな宿泊ビジネス
新たな宿泊体験の創造を目指し、旅館業のM&A戦略を検討していました。
SNSやWeb集客に長けた若い経営陣とスタッフがおり、伝統に安住するのではなく、時代に合わせた新たな宿泊ビジネスの形を追求していきたいと考えていました。
希望するエリアと投資予算を明確に設定し、アドバイザーに伝えていたおかげで、アドバイザーも目線を合わせた動きをしてくれて、本格的に進めることになりました。
条件に合う案件を待つ中で、アドバイザーのネットワークが捉えたのは、九州にある一軒の旅館でした。80歳のオーナー社長が長年経営してきた、地域に根付いた宿泊施設でした。後継者がおらず、建物の老朽化も進み、今後の経営継続に課題を抱えていたということでした。
可能性を感じた現地視察
実際に現地を訪れると、確かに建物は時代を感じさせるものでした。しかし同時に、随所に施されたバリアフリー対応、高齢者に優しい設計が目に留まりました。高齢者の利用だけでなく、家族連れが安心して過ごせる空間へと進化できる可能性を強く感じたのです。古さはリスクでもありましたが、見方を変えれば、今のニーズに応えるための「素地」が既に存在していたのです。
若い経営陣たちはすぐにイメージを膨らませました。客室リニューアル、共用スペースの拡張、キッズ向け設備の導入──。SNSで家族層に訴求し、地方観光の拠点として新たなブランドを築く未来がリアルに描けました。この変容のストーリーを支えてくれたのも、アドバイザーでした。
難航する条件面の調整と粘り強く丁寧な対話
いざ交渉に入ると、当然ながら条件面での調整が必要になりました。老朽化に伴う設備投資負担、現行スタッフの処遇、売買価格の調整。簡単にはまとまらない局面もありましたが、アドバイザーは粘り強く提案を重ね、双方が納得できるような着地点を探り続けてくれました。
特に売り手側である高齢のオーナー社長にとって、事業の引き渡しは人生の一大決断でした。急かすことなく、丁寧な説明と配慮をもって対話を重ねたことで、徐々に信頼が生まれ、最終的には前向きな合意に至ることができました。
リブランディングへの挑戦

買収後は、家族向け旅館としてのリブランディングに本格的に取り組みました。
まず、既存のバリアフリー環境を活かしながら、小さな子ども連れでも安心して宿泊できるよう、客室とお風呂の改装を行いました。段差を減らし、安全面に配慮した設計にリニューアルしたことで、子ども連れのファミリー層からの好評を得ることができました。
食事面でも大きな変化を加えました。従来の定番料理に加え、子ども向けメニューや、アレルギー対応メニュー、複数世代が一緒に楽しめるバリエーション豊かな食事プランを導入し、家族全員が満足できる体験を目指しました。
さらに、地域の魅力を楽しんでもらうため、近隣を散策できる工夫も施しました。外出用の浴衣、下駄、日傘、雨傘などを充実させ、ちょっとした散歩も旅の思い出になるような工夫を随所に凝らしました。旅館を中心にした滞在型の楽しみ方を提案できるようになったのは、大きな進化だと感じています。
成功に至った背景
今回の成功の背景には、まず希望エリアと投資条件を初期段階で明確にし、アドバイザーとしっかり共有できていたことがありました。それにより、売却情報をいち早くキャッチし、スムーズに検討を進めることができました。
また、施設の古さだけに囚われず、既存のバリアフリー環境を活かして新たなターゲット層に訴求できる可能性を見出せたことが、成功への転機になったと思います。条件調整に際しても、アドバイザーの粘り強い調整提案と、双方の想いに寄り添った交渉によって、信頼関係を壊すことなく合意に至ることができました。
このプロジェクトを支えてくださったアドバイザーには、感謝しています。私たちの想いを汲み取り、売り手側にも真摯に向き合いながら、丁寧なサポートを続けてくださったことで、単なる取引にとどまらない、未来へつながる素晴らしい出会いを実現することができました。これからも、ともに歩んでいけることを楽しみにしています。